水彩画を描くときに、どんなサイズ(縦横比)で描いたらいいのか迷ったことはありませんか?
油絵はキャンバスに描くことが多いので号数で描くことが一般的です。
では、水彩画も号数で描いたらいいのでしょうか?
実はそうとも言えないのです。
私は20号以下の絵は号数で描かないことが多いです。
なぜかというと、額のサイズにあります。
なので結論から言うと
「額に合わせて任意のサイズで描く」というのが私の考えです。
油絵は号数のキャンバスサイズで描き、号数に合った油彩額にいれます。
水彩画はデッサン額という額の種類に入れて、作品と絵の間にマットという台紙をいれるのが一般的です。
このデッサン額が、号数の寸法や縦横比と合っていないということが問題です。
例えば、水彩画をF4号のサイズ(333×242㎜)で描いた時、デッサン額では、四ツ切(よつぎり)423×347㎜にいれるか、大衣(だいころ)508×393mmにいれるかの選択になるのが一般的です。
F4号と四ツ切の寸法を比べると、計算上では長辺では423-333=90 90÷2=マット幅45㎜ 短辺では347-242=105 105÷2=マット幅52.5㎜となります。好みにもなりますが、マット幅が50㎜より狭くなると窮屈な印象に感じられます。
また、F4号と大衣の寸法を比べると、計算上では長辺では508-333=175 175÷2=マット幅87.5㎜ 短辺では393-242=151 152÷2=マット幅75.5㎜となり、こちらはマット幅が広過ぎるように感じます。
なので私は四ツ切(よつぎり)423×347㎜の額にいれると決めて、作品寸法を293×202㎜で描きます。
この寸法が、どこから来たのかというと、F4号の寸法に対して上下左右それぞれ20㎜小さくした寸法です。
マット幅は
423-293=130 130÷2=65㎜ 実際には上下左右2㎜絵にかぶせるので65+2=67㎜
347-202=145 145÷2=72.5㎜ 実際には上下左右2㎜絵にかぶせるので72.5㎜+2=74.5㎜
(マットのくり抜き寸法は289×198㎜です)
この様な自分の基準に統一すると、制作がスムーズにります。
F4号の紙で制作する時は、常に上下左右20㎜を測り、そこにマスキングテープで囲ってから制作します。
額に入れる時のマットの寸法も常に同じになります。
マット幅を統一しているので、一度入れた額とマットに違う作品を入れ替えることもできます。
同じような考えから、大衣(だいころ)508×393mmの額にいれると決めて、作品寸法を360×268㎜で描きます。
これはF6号(410×318㎜)の寸法に対して、上下左右25㎜小さくした寸法です。
結果、マット幅が長辺では76㎜ 短辺では66.5㎜となります。
(マットのくり抜き寸法は356×260㎜です)
上記の寸法は、私が制作上スムーズで、マット幅が心地よいと感じた勝手な寸法です。
参考までにお伝えしました。
ただし、この様な寸法でのデメリットが大きく2つあります。
ひとつは、コンクールに出す時です。
多くの絵画コンクールは号数で、イラストのコンクールはA版B版などの寸法が基準となっています。
良い作品ができたからどこかのコンクールに出そうとした時に規定に合わないということが考えられます。
もうひとつは、販売価格です。
絵画の販売価格は号数で考えることが一般的です。
例えば1号を1万円という作家の場合、4号では4万円といった具合に考えます。
私の作品サイズは号数に合っていません。
そこで私は四ツ切りにいれた作品を3.5号として計算します。
大衣の場合は5号として計算をします。(※3.5号も5号も実際にはありません。3号の次は4号。その次は6号になります。)
趣味の範囲内で作品を販売する場合は、同じ大きさの絵でも思い入れの強い作品は少し高くつけるなど自由に設定してもいいと思います。
しかし、作家として活動する場合は作品の大きさで価格を統一した方が問題はおこりにくいでしょう。
以上の2つがデメリットです。
また、補足として最初に述べた20号以下の作品は、額に合わせた任意の寸法で考えていますが、20号以上の作品は号数の板に水張りして油彩額にいれることが多いです。大きい作品のデッサン額は種類が少ないのと、作品に対してマット幅が大きくなるので額がかなり大きくなります。油彩額の本額(ほんがく)は高価ですが、仮縁(かりぶち)は安価です。最近はオシャレな仮縁も出ています。
最後に、デッサン額の中にはスケッチ寸法という、号数に合わせた額もあります。
F6号で描いた作品はスケッチF6というデッサン額にいれるとマット幅が丁度いいというものです。
しかし、この寸法で作っているメーカーは少なく、デザインも少ないのが現状です。
額選びは絵を描く楽しみのひとつです。
ネットで買った方が安い場合もありますが、作品を持って店頭で合わせて買った方が納得のいく仕上がりになります。
懇意にする額屋さんや画材屋さんがあると、困った時に質問することもできるので、そのようなお店を作っておくのもいいでしょう。